子どものナルコレプシー——「授業中に寝てしまう」は怠けではありません。症状・診断・治療薬の違いを名古屋みなとクリニック(名古屋市港区・児童精神科)が詳しく解説

子どものナルコレプシー——「授業中に寝てしまう」は怠けではありません。症状・診断・治療薬の違いを名古屋みなとクリニック(名古屋市港区・児童精神科)が詳しく解説

「毎日十分寝ているはずなのに、授業中に必ず寝てしまう」「先生から『やる気がない』『夜更かししているのでは』と言われ続けている」「笑ったときに、突然膝の力が抜けてへたり込む」「寝入りばなに人影が見えて怖がる」「金縛りによく遭うと訴える」「居眠りが原因で成績が下がり、不登校気味になってきた」——こうしたお子さまの様子に、「本人の努力不足なのか、それとも病気なのか」と悩まれている保護者の方は少なくありません。

これらの症状の背景に、ナルコレプシーという睡眠障害が隠れていることがあります。ナルコレプシーは日本人に比較的多い疾患で、有病率はおよそ600人に1人とされ、発症のピークは14〜16歳頃——まさに中学・高校生の時期です。

そして最大の問題は、診断までに平均で10年以上かかるという報告があることです。その間、お子さまは「怠けている」「だらしない」と評価され続け、自己肯定感を大きく損ないます。

名古屋市港区の名古屋みなとクリニックが、ナルコレプシーの4つの主症状、子ども特有の現れ方、ADHDや不登校との関係、治療薬の違い、学校での配慮まで、詳しく解説します。


目次

  1. ナルコレプシーとは——脳の覚醒を保つ仕組みの障害
  2. 4つの主症状【比較表】
  3. 【重要】子ども特有の症状の現れ方【比較表】
  4. なぜ「怠け」と誤解されるのか
  5. どのくらいの人にみられるのか——日本人に多い病気です
  6. 原因——オレキシンという物質の不足
  7. 誤診・見落としが起こりやすい病気【比較表】
  8. ADHDとの関係——不注意の裏に眠気があることも
  9. 不登校との関係——見落とされやすい背景
  10. セルフチェック——受診を考える目安
  11. 診断の流れ——確定診断には専門的な検査が必要です
  12. 治療①:生活の工夫——「計画的仮眠」が治療の柱
  13. 治療②:薬物療法【比較表】
  14. 学校との連携——お願いしたい配慮
  15. 進路・運転免許について——早めに知っておきたいこと
  16. よくある心配事Q&A
  17. 名古屋みなとクリニックでの診療について

1. ナルコレプシーとは——脳の覚醒を保つ仕組みの障害

ナルコレプシーは、日中に強い眠気が繰り返し起こり、突然眠り込んでしまうことを主症状とする睡眠障害です。「過眠症」の代表的な疾患とされています。

「眠り過ぎる病気」ではありません

よくある誤解ですが、ナルコレプシーは睡眠時間の総量が長い病気ではありません。

問題なのは、覚醒状態を維持する脳の仕組みが働かないことです。そのため、起きているべき場面で眠気に襲われ、逆に夜は眠りが細切れになって何度も目が覚めます。

「昼も夜も、睡眠と覚醒の境目が保てない」——これがナルコレプシーの本質です。

眠気の性質

通常の「眠い」とは質が異なります。

  • 抗いがたい(意志で我慢できない)
  • 突然襲ってくる(睡眠発作)
  • 会話中、食事中、歩行中、試験中でも起こる
  • 短時間(15〜20分程度)眠ると、いったんすっきりする
  • しかし数時間でまた眠気が戻る

この「短時間の睡眠で回復するが、また戻る」というパターンは、ナルコレプシーに特徴的です。


2. 4つの主症状【比較表】

ナルコレプシーには、4つの代表的な症状があります。全部がそろうとは限らず、日中の眠気だけが現れる場合もあります。

症状内容頻度
① 日中の過度の眠気(EDS)抗いがたい眠気と突然の睡眠発作。必須症状ほぼ全例
② 情動脱力発作(カタプレキシー)笑い・驚き・怒りなど強い感情がきっかけで、突然身体の力が抜ける。意識は保たれている一部(タイプ1)
③ 入眠時幻覚寝入りばなに、現実と区別がつかないほど鮮明な幻覚(人影、音、触られる感覚など)高頻度
④ 睡眠麻痺(金縛り)入眠時や覚醒時に、意識はあるのに身体が動かせない高頻度

加えて:夜間睡眠の分断

「昼に眠いなら夜はぐっすり眠れるはず」と思われがちですが、実際には逆です。 ナルコレプシーでは夜中に何度も目が覚め、睡眠が細切れになります。

タイプ1とタイプ2

タイプ1タイプ2
情動脱力発作ありなし
オレキシン著しく低下保たれていることが多い
診断のしやすさ比較的つきやすい見落とされやすい

情動脱力発作がないタイプ2は、「ただの眠気」と受け取られやすく、診断が遅れがちです。


3. 【重要】子ども特有の症状の現れ方【比較表】

大人と子どもでは、症状の見え方が異なります。 この違いを知らないと、見落とされてしまいます。

症状大人での現れ方子ども特有の現れ方
日中の眠気会議中や運転中の居眠り居眠りではなく「多動」「イライラ」として現れることがある。眠気に抗おうとして落ち着きがなくなる
情動脱力発作膝折れ、全身の脱力顔面の脱力が目立つ。まぶたが下がる、口が半開きになる、舌が出る、首が垂れる、顔をしかめる
発作の誘因大笑い、驚き些細な楽しい出来事でも誘発されることがある
生活への影響仕事の能率低下学業不振、友人関係の悪化、自己評価の低下
体重発症後、短期間で体重が増加することがある

特に見逃されやすい「顔面の脱力」

子どもの情動脱力発作は、倒れるほどはっきりしたものではなく、顔の表情の変化として現れることがあります。

  • 笑ったときにまぶたが下がる
  • 口元がゆるむ、舌が出る
  • 首がガクッと前に垂れる
  • 歩いているときに膝がカクッとなる

保護者の方が「変な顔をする」「ふざけている」と受け取ってしまうことも少なくありません。動画で記録しておくと、診察時に非常に有用な情報になります。

眠気が「多動」に見えることがある

これは重要なポイントです。強い眠気に抗おうとして、身体を動かし続ける、しゃべり続ける、そわそわする——結果として「落ち着きがない子」に見えることがあります。

このため、ADHDと誤って評価されるケースがあります(後述)。


4. なぜ「怠け」と誤解されるのか

ナルコレプシーのお子さまが最も傷つくのが、周囲からの誤解です。誤解が生じるのには、構造的な理由があります。

① 見た目には「ただ寝ている」だけ

授業中に寝ていれば、教師も同級生も「夜更かししている」「やる気がない」と考えます。病気であるという発想が、そもそも周囲にありません。

② 短時間の仮眠で回復する

少し眠るとすっきりして活動できるため、「本当に眠かったのか」「都合よく寝ているのでは」と見えてしまいます。

③ 検査で「異常なし」と言われる

一般的な血液検査や画像検査では異常が出ません。専門的な睡眠検査を行わない限り、ナルコレプシーは見つかりません。

④ 本人も説明できない

「なぜこんなに眠いのか」を子ども自身が言語化できません。「夜は寝ている」としか言えず、周囲には伝わりません。

誤解が続くとどうなるか

叱責され続ける経験は、二次的な問題を生みます。

  • 自己肯定感の低下(「自分はダメな人間だ」)
  • 抑うつ状態
  • 対人関係からの回避
  • 不登校
  • 進路の断念

ナルコレプシーそのものより、この二次的な影響のほうが、長期的にお子さまの人生を左右することがあります。


5. どのくらいの人にみられるのか——日本人に多い病気です

  • 日本での有病率はおよそ600人に1人(0.16〜0.18%程度)
  • 日本は世界的に見ても有病率が高い国の一つです
  • 発症のピークは14〜16歳(思春期)
  • 10歳未満の発症もあります
  • 男女差は大きくありません

中学校の全校生徒が600人なら、計算上1人はいることになります。決して「めったにない珍しい病気」ではありません。

診断の遅れという問題

にもかかわらず、発症から確定診断までに平均10年以上を要するという報告があります。 思春期に発症して、成人してから初めて診断される方も多くいらっしゃいます。

この「失われた10年」を短くすることが、児童精神科の重要な役割だと考えています。


6. 原因——オレキシンという物質の不足

オレキシンとは

脳の視床下部でつくられる神経伝達物質で、覚醒状態を維持する働きを担っています。

ナルコレプシー(タイプ1)では、このオレキシンをつくる神経細胞が失われていることがわかっています。そのため覚醒を保てず、また睡眠と覚醒の切り替えが不安定になります。

なぜオレキシン神経細胞が失われるのか

自己免疫のメカニズムが関与していると考えられています。特定の体質(HLAという免疫に関わる遺伝子型)を持つ方で発症しやすいことが知られており、タイプ1のほぼ全例が特定のHLA型を持つという強い関連が報告されています。

保護者の方にお伝えしたいこと

育て方や生活習慣が原因ではありません。

「夜更かしをさせたから」「ゲームばかりさせたから」——そうしたことでナルコレプシーになるわけではありません。脳の神経細胞に起きた変化による、身体の病気です。

保護者の方がご自身を責める必要はまったくありません。


7. 誤診・見落としが起こりやすい病気【比較表】

「日中の眠気」は、さまざまな原因で生じます。ナルコレプシーの診断には、これらを丁寧に区別する必要があります。

状態見分けるポイント
睡眠不足症候群最も多い原因。 単純に睡眠時間が足りていない。睡眠日誌をつけると明らかになる
概日リズム睡眠・覚醒障害(睡眠相後退型)夜眠れず朝起きられない。休日に遅くまで寝れば眠気は改善する
睡眠時無呼吸症候群いびき、無呼吸、扁桃肥大。肥満児だけでなく、扁桃・アデノイド肥大の子どもにも多い
特発性過眠症眠気はあるが、情動脱力発作がなく、仮眠してもすっきりしない。長時間眠り続ける
起立性調節障害(OD)朝起きられないが、「眠気」というより立ちくらみ・倦怠感が中心
うつ病意欲低下、興味の喪失を伴う。眠気より「動けない」感覚
ADHD不注意が中心。ただしナルコレプシーの眠気が不注意に見えることがある
薬剤性抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)、一部の向精神薬による眠気
鉄欠乏・甲状腺機能低下血液検査で確認可能

見分けの決め手になる質問

診察では、次のような点を確認します。

  • 十分な睡眠時間をとった翌日も眠いか(睡眠不足との区別)
  • 短い仮眠ですっきりするか(特発性過眠症との区別)
  • 感情が動いたときに力が抜けることがあるか(情動脱力発作の有無)
  • 寝入りばなの幻覚や金縛りがあるか
  • いびきや無呼吸があるか

「休日にたっぷり寝れば平気」なら睡眠不足、「どれだけ寝ても眠い」ならナルコレプシーや特発性過眠症を疑います。


8. ADHDとの関係——不注意の裏に眠気があることも

これは児童精神科において、特に注意している点です。

眠気が「不注意」に見える

強い眠気があると、次のような状態になります。

  • 集中が続かない
  • 話を聞いていない
  • ミスが増える
  • ぼんやりしている

これらは、ADHDの不注意症状とほぼ同じに見えます。

眠気が「多動」に見える

前述のとおり、眠気に抗おうとして身体を動かす、しゃべり続ける、といった行動が出ることがあります。これも多動と区別がつきにくくなります。

だから睡眠の評価が必要です

「不注意・多動があるからADHD」と結論づける前に、睡眠の状態を確認することが不可欠です。

当院では、不注意や多動のご相談に対して、睡眠に関する問診を必ず行います。 睡眠時間、就寝・起床時刻、いびきの有無、日中の眠気、仮眠の効果——これらを確認せずにADHDの診断を進めることはありません。

両者が併存することもあります

なお、ナルコレプシーとADHDが併存するケースもあります。「どちらか一方」と決めつけず、全体を評価することが重要です。


9. 不登校との関係——見落とされやすい背景

不登校の背景にナルコレプシーがあるケースは、実際に存在します。

よくある経過

  1. 授業中の居眠りが増える
  2. 成績が下がる
  3. 「怠けている」と叱責される
  4. 自己肯定感が下がり、学校に行くのがつらくなる
  5. 友人関係も疎遠になる
  6. 欠席が増え、不登校へ

この経過をたどっている場合、「学校に行きたくない気持ち」に対応するだけでは解決しません。 根本にある眠気が続く限り、同じことが繰り返されます。

「朝起きられない」との違い

不登校のお子さまで「朝起きられない」という訴えは非常に多く、その多くは起立性調節障害(OD)や概日リズムの問題です。

しかし、**「起きられる。でも日中ずっと眠い」**という場合は、ODとは異なる病態を考える必要があります。

  • 朝起きられないのが中心 → 起立性調節障害、睡眠相後退
  • 起きられるが、日中の眠気が強い → 過眠症(ナルコレプシー等)を疑う

この区別は、診断の重要な入り口です。


10. セルフチェック——受診を考える目安

以下に複数当てはまる場合、一度ご相談ください。

眠気について

  • 十分な睡眠時間(8〜9時間)をとっても、日中に強い眠気がある
  • 授業中、ほぼ毎日眠ってしまう
  • 会話中や食事中にも眠ってしまうことがある
  • 眠気を我慢できない、と本人が言う
  • 15〜20分の仮眠ですっきりするが、数時間でまた眠くなる
  • 休日にたくさん寝ても、平日の眠気が変わらない

情動脱力発作について

  • 大笑いしたときに、膝や身体の力が抜けることがある
  • 驚いたときに、首がガクッと垂れる
  • 楽しいときに、まぶたが下がる、口が半開きになる、舌が出る
  • そのとき意識はしっかりしている

その他

  • 寝入りばなに、現実と区別がつかない幻覚を見る・聞く
  • 金縛りに頻繁に遭う
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 短期間で体重が増えた

特に「情動脱力発作」に該当する項目があれば、早めの受診を強くおすすめします。 この症状はナルコレプシーに特徴的で、他の病気ではあまりみられません。


11. 診断の流れ——確定診断には専門的な検査が必要です

① 問診・睡眠日誌

いつから、どのような眠気か、生活リズム、家族歴などを詳しく確認します。2週間程度の睡眠日誌をつけていただくことが、非常に有用です。

② 眠気の評価

エプワース眠気尺度(ESS)などの質問票で、眠気の程度を数値化します。

③ 他の原因の除外

血液検査(貧血、甲状腺機能など)、服用中の薬の確認、生活状況の確認を行います。

④ 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)+反復睡眠潜時検査(MSLT)

確定診断に必要な検査です。

  • PSG:一晩入院し、脳波・呼吸・筋電図などを記録。睡眠時無呼吸などの除外も兼ねます
  • MSLT:翌日、2時間おきに5回、暗い部屋で横になり「どのくらい早く眠るか」「レム睡眠がすぐ出るか」を測定します

ナルコレプシーでは、通常より極端に早く眠りに落ち、しかも入眠直後にレム睡眠が出現するという特徴的なパターンを示します。

⑤ 必要に応じた追加検査

髄液中のオレキシン濃度測定、HLA検査などが行われることがあります。

【重要】検査は専門施設で行います

PSG・MSLTは、睡眠検査の設備がある医療機関で行う必要があります。 当院ではこれらの検査は実施しておりません。

当院の役割は、「この症状はナルコレプシーの可能性があるか」を見極め、必要な場合に検査可能な専門医療機関へ的確につなぐこと、そして診断後の治療継続・学校連携・二次障害への対応を担うことです。

「どこに相談すればよいかわからない」という段階で、まずご相談ください。


12. 治療①:生活の工夫——「計画的仮眠」が治療の柱

薬物療法と並んで、いえ、それ以上に重要なのが生活の工夫です。

計画的仮眠(スケジュールされた昼寝)

ナルコレプシーの眠気は、短時間の仮眠で確実に改善します。 この特性を利用します。

  • 1回15〜20分の仮眠を、1日1〜3回、決まった時間にとる
  • 眠くなってからではなく、眠くなる前にとるのがポイント
  • 昼休みや、決められた時間に保健室などで

「眠くなったら寝る」ではなく「予定として組み込む」——これが計画的仮眠です。この工夫だけで、午後の授業への参加が大きく改善するお子さまがいます。

規則正しい睡眠

  • 夜の睡眠時間を十分に確保する
  • 就寝・起床時刻を一定に保つ(休日も含めて)
  • 就寝前のスマートフォン・ゲームを控える

夜の睡眠が乱れると、日中の眠気は確実に悪化します。

その他の工夫

  • 昼食を摂りすぎない(食後の眠気を悪化させます)
  • カフェインは補助的には有効だが、夜の睡眠を妨げるため夕方以降は避ける
  • 眠気が強い時間帯に、危険を伴う活動(水泳、高所、調理実習など)を入れない
  • 適度な運動を習慣にする

13. 治療②:薬物療法【比較表】

生活の工夫だけでは十分でない場合、薬物療法を併用します。症状によって使う薬が異なります。

対象症状薬剤(一般名)主な商品名特徴・注意点
日中の眠気モダフィニルモディオダール®覚醒を維持する。ナルコレプシーの日中の眠気に対する中心的な薬剤。頭痛・不安・食欲低下などの副作用
日中の眠気メチルフェニデート(速放製剤)リタリン®ナルコレプシーに対する適応がある。流通が厳格に管理されており、登録医療機関・登録医師・登録薬局でのみ取り扱い可能
日中の眠気ペモリンベタナミン®肝機能障害のリスクがあり、定期的な血液検査が必要。使用機会は減少
情動脱力発作クロミプラミンアナフラニール®ナルコレプシーに伴う情動脱力発作に対する適応がある
情動脱力発作SSRI・SNRI情動脱力発作の抑制に用いられることがある(適応外使用を含む)

薬物療法で知っておいていただきたいこと

① 「治す薬」ではありません

失われたオレキシン神経細胞を再生する薬は、現時点では存在しません。薬は症状をコントロールし、生活の質を保つためのものです。

② 小児への使用は慎重に判断します

上記の薬剤の多くは、小児での使用にあたって慎重な判断が必要です。年齢、症状の程度、生活への支障、副作用のリスクを総合的に考慮し、必要性が十分にある場合に、少量から開始します。効果と副作用について十分にご説明したうえで、ご本人・ご家族と相談しながら決定します。

③ 眠気と脱力発作は別々に対処します

「眠気の薬」と「情動脱力発作の薬」は作用が異なります。両方の症状がある場合、併用することがあります。

④ 生活の工夫が土台です

薬を使っても、睡眠が乱れていれば効果は限定的です。計画的仮眠と規則正しい生活が前提となります。

⑤ 自己判断での中止・増量は避けてください

特に流通管理下の薬剤については、厳格な管理が求められます。


14. 学校との連携——お願いしたい配慮

学校の理解が得られるかどうかで、お子さまの生活は大きく変わります。

お願いしたい配慮の例

  • 授業中の居眠りを「怠け」として扱わない
  • 計画的仮眠のための場所と時間の確保(保健室、空き教室など)
  • 眠気が強い時間帯を避けた時間割の調整(可能な範囲で)
  • 試験時の配慮(別室受験、途中の休憩、時間帯の調整)
  • 板書の写真撮影やプリント配布など、学習内容を補う手段
  • 安全面の配慮——水泳、高所での作業、調理実習、実験など、眠気や脱力発作で事故につながる場面での見守り
  • 体育の見学・部分参加の柔軟な運用
  • 部活動の負担調整
  • クラスメイトへの説明(本人・保護者の同意のもとで)

診断書の活用

医師の診断書があることで、学校側も配慮の根拠を持つことができます。 当院では、必要に応じて学校提出用の診断書・意見書を作成しています。

「どのような配慮が必要か」を具体的に記載することで、実効性のある支援につながります。

「病気である」と伝わることの意味

ナルコレプシーのお子さまにとって、「怠けているのではない」と学校に理解されること自体が、大きな治療的意味を持ちます。

叱責が止まり、仮眠が認められ、居場所ができる。それだけで表情が変わるお子さまを、私たちは見てきました。


15. 進路・運転免許について——早めに知っておきたいこと

進路の選択

ナルコレプシーがあっても、多くの方が進学し、就職し、社会生活を送っています。ただし、症状の特性を踏まえた選択をしておくと、後が楽になります。

考慮したい点:

  • 眠気が強い時間帯に長時間の集中を要する環境かどうか
  • 仮眠が取れる環境かどうか
  • 安全上のリスクを伴う職種かどうか

進路について、診察の中でご相談いただけます。 早い段階で見通しを持っておくことが、本人の安心につながります。

運転免許について——重要です

日中の強い眠気を伴う疾患がある場合、運転免許の取得・更新にあたって申告が必要です。 症状がコントロールされていれば取得できる場合もありますが、未治療・コントロール不良の状態での運転は、極めて危険です。

高校生になると免許取得の話題が出てきます。そのタイミングで初めて問題に直面するより、事前に医師と相談しておくことをおすすめします。当院でも、必要な情報提供や診断書の作成に対応いたします。


16. よくある心配事Q&A

Q. 夜きちんと寝かせれば治りますか?

A. 規則正しい睡眠は治療の土台として重要ですが、それだけでは解決しません。ナルコレプシーは覚醒を維持する脳の仕組みの問題であり、睡眠時間を増やしても日中の眠気は残ります。「夜きちんと寝ているのに日中眠い」ことこそが、この病気を疑うサインです。

Q. 授業中に寝てしまうのは、本人の意志の問題ではないのですか?

A. 意志では抗えません。ナルコレプシーの眠気は「抗いがたい」と表現され、会話中や食事中でも眠り込むほどの強さがあります。叱責しても改善せず、自己肯定感を損なうだけです。

Q. 一生治らないのですか?

A. 現時点では根治する治療法はなく、長期にわたる管理が必要な疾患です。しかし、適切な治療と生活の工夫によって、学業・仕事・日常生活を十分に送ることができます。「治らない」と「生活できない」は別のことです。

Q. 薬を飲むと性格が変わりませんか?

A. 適切な用量であれば、性格や個性が変わることはありません。副作用として不安感やイライラが出ることがありますので、気になる変化があれば必ずお伝えください。用量の調整や薬剤の変更で対応できます。

Q. 遺伝しますか?

A. 発症しやすい体質(HLA型)に関連があることは知られていますが、その体質を持つ方の大多数は発症しません。 「親がナルコレプシーだから子どもも必ずなる」というものではありません。

Q. ADHDと診断されていますが、ナルコレプシーの可能性もありますか?

A. 可能性はあります。眠気による不注意や、眠気に抗うための多動が、ADHDの症状に見えることがあります。 治療をしても不注意が改善しない、日中の強い眠気がある、仮眠ですっきりする——こうした場合、睡眠の評価をおすすめします。

Q. 検査のために入院が必要と聞きましたが、学校を休まなければなりませんか?

A. 確定診断のためのPSG・MSLTは、通常1泊2日程度の検査入院が必要です。学校の予定を考慮して、長期休暇中に実施することも可能です。検査可能な施設をご紹介する際に、日程についてもご相談いただけます。

Q. まず何科を受診すればよいですか?

A. お子さまの場合、児童精神科または小児科へのご相談が入り口になります。当院では、眠気の評価、他の原因との鑑別、発達特性や不安・抑うつの評価まで含めて診てまいります。「どこに行けばよいかわからない」という段階で構いません。


17. 名古屋みなとクリニックでの診療について

名古屋市港区にある**名古屋みなとクリニック(皮膚科・美容皮膚科・内科・児童精神科・精神科)**では、お子さまの日中の眠気に関するご相談に対応しています。

当院での対応内容

  • 日中の眠気に関する詳細な問診と評価
  • 睡眠日誌・眠気尺度(ESS)による評価
  • 睡眠不足症候群、概日リズム睡眠障害、睡眠時無呼吸などとの鑑別
  • 起立性調節障害との鑑別
  • 血液検査による他疾患の除外(貧血・甲状腺機能など/内科と連携)
  • ADHD・ASDなど発達特性の評価(眠気との区別を含む)
  • 不安症・抑うつ状態など二次障害の評価と治療
  • PSG・MSLTが実施可能な専門医療機関へのご紹介
  • 診断後の薬物療法の継続・用量調整
  • 計画的仮眠を含む生活指導
  • 学校提出用の診断書・意見書の作成、学校との連携
  • 進路・運転免許に関するご相談

※確定診断に必要な終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)・反復睡眠潜時検査(MSLT)は、当院では実施しておりません。専門医療機関へご紹介いたします。

こんな方はぜひご相談ください

  • 十分寝ているはずなのに、日中の眠気が強い
  • 授業中にほぼ毎日寝てしまう
  • 「怠けている」「やる気がない」と言われ続けている
  • 笑ったときや驚いたときに、身体の力が抜けることがある
  • 寝入りばなに幻覚を見る、金縛りによく遭う
  • 居眠りが原因で成績が下がり、不登校気味になっている
  • ADHDと診断されているが、治療しても不注意が改善しない
  • 起立性調節障害と言われたが、朝以外も眠気が強い
  • どこに相談すればよいかわからない

「ナルコレプシーのお子さまが最も苦しむのは、眠気そのものよりも『怠けている』と言われ続けることです。診断がつくまでに10年かかることも珍しくない疾患ですが、その10年は、本人が自分を責め続ける10年でもあります。『十分寝ているのに日中眠い』——このひと言に、私たちは注意を払っています。診断は専門施設との連携が必要ですが、その入り口として、そして診断後の生活を支える場として、お力になれればと思います。」


名古屋みなとクリニック 皮膚科・美容皮膚科・内科・児童精神科・精神科

〒455-0068 名古屋市港区土古町4-20 SLR港北

TEL:052-387-8083

HP:https://nagoya-minato-clinic.com/ Instagram:https://www.instagram.com/nagoya.minato.clinic

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【TEL】052-387-8083 【診療時間】10:30~13:30、14:30~18:30 【休診日】月・木・土 【アクセス】あおなみ線「港北駅」徒歩約8分

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